日本女子ツアーを代表するショートゲームの名手2人の優勝争いは見応えがありました。JLPGAツアー第31戦・富士通レディース最終日(13日、千葉市・東急セブンハンドレッドクラブ=6697㍎パー72)。今季、平均ストローク69点台を続けながら未勝利だった山下美夢有が、通算14アンダーで並んだエビアン選手権で優勝した古江彩佳をプレーオフ2ホール目で退け、今季初優勝を飾りました。
「きょうは伸ばすしかない。やるぞっという気持ちで臨みました」という最終日。首位タイの古江に2打差でスタートした山下は11番終了時に7バーディー、ノーボギーで単独首位に立ちました。ところが今季初優勝をたぐり寄せたところで、13、14番でまさかの連続3パットボギー。「流れをつかめなかった。最終日は難しい」と感じたそうです。
ここで終わらないのが山下。しっかりしたマネージメントで、16番パー5でバーディーを奪い、14アンダーに戻して最終18番へ。しかし、ティーショットを右にミスすると、ラフからのユーティリティーもグリーン右のラフ。ピンまで約45㍎のアプローチも緩んだのか、約12㍍のパーパットを残しました。一方、17番パー3でティーショットした古江は、ピンまで194㍎を7番ウッドでワンピン以内に。これで万事休すかと思いましたが、山下のパーパットは、ピン真ん中にぶち当たって入るスーパーパーセーブでした。
「パーパットは入れるしかないと思っていたので、思い切って強気でいきました」と山下。入らなければ3㍍はオーバーしていたような気合のストロークでした。
一方、古江は17番でバーディーを奪い、15アンダーとしましたが、最終ホールで2打目をバンカーに入れてボギー。優勝の行方は、18番ホールでのプレーオフへともつれ込みました。
18番は、奥行きの狭い横長の巨大な砲台グリーン。ほぼ垂直の壁がそびえるバンカーが難易度を高め、ボール位置によってはバンカーからピンを狙えない。最終日、プロ初優勝を狙った馬場咲希がバンカーにはまり、ダブルパーを打ちました。
プレーオフ1ホール目は、2人ともボギー。2ホール目のティーショットは2人ともフェアウエーから。ユーティリティーで打った山下がピン横5㍍につけると、アイアンでピンを狙った古江はバンカーに。3打目はピンを狙うことができず、ピン奥10㍍に乗せるのが精一杯でした。
古江の長いパーパットが外れると、山下はしっかりとパーをセーブして、念願の今季初勝利を手にしました。
「今年はオリンピックや海外メジャーにも行って、良かった時もあれば良くないときもありましたが、国内で優勝したいという気持ちもあったので、やっと優勝できてすごくうれしく思う」。山下は優勝後の動画で晴れやかな表情で語りました。
富士通レディースは、男子の日本オープンの裏番組という位置づけですが、今年の富士通も見応えがありました。女子ツアーは佳境に入り残6試合となりました。メルセデスポイントでは、首位の竹田麗央との差はまだ500㌽以上ありますが、終盤戦で山下がどこまで勝ち星を重ねることができるか。女子ツアーから目が離せません。
時田 弘光
~No Golf No Life~
以前は真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。全盛期は7000㍎級のコースでクラチャンになったこともありますが、今はドライバーで200㍎の壁と戦っています。